脱亜論

■室谷克実（むろたに・かつみ）

　朴槿恵（パク・クネ）大統領側近の中に派閥が明確な形で浮上し、政権ナンバー２を追い落とそうと策動する。
「慶尚道（キョンサンド）×全羅道（チョルラド）」の地域対立に火を付けようとする政治家が現れ、軍部の腐敗は
どうにも覆い隠せない。海外部門での膨大な損失が、借金まみれの経済構造全体の足を引っ張り、政権は
報道への圧力に走る…。現下の韓国情勢は、父、朴正煕（パク・チョンヒ）政権の末期に似てきた。

　朴政権の内部監察文書が流出した。そこに記されていた内容は青瓦台（韓国大統領府）に潜む宿痾（しゅくあ）の
魔性を物語る。

　問題の文書は、民情（民政かもしれない。ハングル表記では同じ）首席秘書官の隷下にある公職規律担当秘書官室に
出向していた警察官が作成した。

　ハンギョレ新聞など韓国各紙によると、問題の「空白の７時間」で“秘線”（密会の相手）とされた人物である
チョン・ユンフェ氏と３人の大統領秘書官が月２回ぐらい外部で会合、大統領府の内部と現政権の動向を論議し、
チョン氏が非常に具体的な指示を与えたこともあるとされる。

　文書のタイトルは「青瓦台秘書室長交代説などＶＩＰ側近（チョン・ユンフェ）動向」。政権ナンバー２である金淇春
（キム・ギチュン）秘書室長を追い落とすためのメディア工作などにも触れているようだ。

　この４人はいずれも、朴大統領が国会議員に初当選したころからの側近で、この会合に出席していた他の秘書官室勤務者を
まとめて、報告書は「十常侍」（じゅうじょうじ）と記しているという。「十常侍」とは、中国・後漢末に朝廷を掌握した１０人の宦官
（かんがん）のことだ。

　報告書を作成した警察官は情報畑一筋で来た警視正だ。「青瓦台へ出向」と決まった時点で、「情報のプロの中でも
優秀な者」であったことは明らかだ。しかも、この調査と報告書作成は、当時の公職規律担当秘書官の指示によったというのだ。

　青瓦台は「秘書室長の耳にも入れたが、取るに足りないことだ」とする一方で、流出文書をスクープした世界日報を、
お得意の「名誉毀損（きそん）」で告発した。

　それで収めようとしているのだろうが、青瓦台が金淇春氏を中心とする官僚出身者と、朴槿恵側近グループとの暗闘の
場となっていることは明らかではあるまいか。

　こうした中で、文在寅（ムン・ジェイン）元大統領候補は１１月２８日、「捜査機関の幹部はＰＫ（釜山市・慶尚南道出身者）
一色で、経済界はＴＫ（大邱市・慶尚北道出身者）が独占している」「湖南（全羅道）地域に対する差別や冷遇がこれほど
ひどかったことは過去にもなかった」と、“金大中の再来”を思わすかのようにアジった。

　公企業による海外資源開発の失敗のツケは手痛い。そこへ、民間大手建設による海外プロジェクトでの大赤字発生の
報が次々と…。朝日新聞流の表現を借りれば「韓国版・いつか来た道」だ。

zakzak　2014.12.04
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141204/frn1412041140002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20141204/frn1412041140002-n2.htm

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